大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和31年(ワ)5550号 判決 1957年4月10日

事実

原告の主張 被告(荒木徳夫)は第一工業株式会社代表取締役名義を以て昭和三一年七月三日金額一二三、〇〇〇円、支払期日同年一〇月六日、支払地振出地共に大阪市、支払場所株式会社神戸銀行西野田支店なる約束手形を原告宛に振出し原告はこれが所持人となつた。而して原告は支払期日に支払場所にのぞみ右手形を呈示して支払を求めたところ取引なしとの理由で支払を拒絶された。

ところで被告が振出人名として用いた右会社は実在しない会社であるから、右手形の振出人は被告であり、被告は右手形の振出人としての責任がある。

理由

被告が第一工業株式会社代表取締役名義で原告主張の手形を原告宛に振出したことは当事者間に争がない。

証拠によれば右会社は実在しないことを認めることができる。

してみれば被告は虚無の会社名義を用いて原告主張の手形を振出したものというべく、この場合被告が振出人本人として責任を負うべきことはいうまでもない(無権代理人としての責を負うのではなく、別名を用いた本人としての責任である。)。而して原告がその主張のように右手形の所持人として適法に呈示したが、支払を拒絶されたことは被告の明らかに争わないところである。然らば被告は原告に対し右手形金を支払うべき義務があるこというまでもない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例